2017年2番目に良かった映画 《血を吸うカメラ》

「カピタ〜ン! わし、うっかり《血を吸うカメラ》忘れてたよ!」(←まだデルス・ウザーラごっこ中)

今年これも見に行ったのをすっかり忘れてました。
マイケル・パウエル監督の《血を吸うカメラ》
なんで忘れていたんだろう。
私の中では、じつはエゴンシーレよりもよかったくらいなのに。

というわけで、あわてて後出し1本、二番目で紹介します。つうか、紹介したい、させて!

邦題《血を吸うカメラ》、原題 ”Peeping Tom”(意味:のぞき魔、古い言葉だと出歯亀)
相変わらず邦題は(自主規制)ですが、中身は秀逸。

「見たい」という欲望は、人間にとってかなり根源的な欲求のような気がします。
特に男性にとっては、(ポルノを持ち出すまでもなく)「見る」ことが、
性的な衝動と強く結びついているように見えますし。
一方、女性の性的な衝動は「見られる」ことと深く関係しているような気がする。
Peeping Tomという英単語も、覗くのはTom、要するに男性です。
覗くのは常に男性で、覗かれるのは常に女性(覗かれたいわけじゃないと思うけど)なのです。

でもそれは、見る側と見られる側に、一種の力関係を生み出します。
見る人間は支配し、見られる人間は支配される。
または奪う側と、奪われる側、と言ってもいいし、
与えられる側と、与える側、ということもあるかも。場合によっては。
美術の《画家とモデル、写真家とモデルの》問題でもあります。

そして、この映画の主人公(男性)は、カメラマン。
仕事では、映画や、ポルノ写真を撮影しています。
一方人知れず、おそろしい「映画作品」を撮っています。
それは女性を殺害して、その殺害シーンを撮影するというもの。


振り返ったら顔に傷のあるモデルに、ハアハア言ってる主人公

でも、そんな異常者の彼は、実際の生活では女性をまっすぐ見ることができないような、
ちょっと怪しいけど、ひどくシャイで、穏やかな人物でもあります。

その彼が、はじめて女性と恋に落ちてしまう。
その時、彼になにが起こるのか?
また彼はなぜ、このようなことをしていたのか?そこには悲しい秘密が…。

予告編風を若干意識してみました(笑)。

映画のなかの映画撮影、というどこか二重に倒錯的な設定とともに、
めまいがするような映画でした。

彼の恐ろしい正体に気づくのが、はじめて愛した女性の、
盲目の(=見ることのできない)母っていうのもなんとも、もうすごく意図的。

映画やお芝居を見るということ自体が、「見る」「覗く」という人間の本質的な欲求そのものと
深く結びついているとは思うのです。
俳優、女優というのは、「見られたい」人々で、彼らを追いかける大衆は、「見たい」人々で、
そのふたつの欲望が結びついているのが、エンターテイメント産業ですから。

この作品は公開当時酷評されたとのことですが、
業界人は、どこか恐怖を感じたのかもなんて、うがってみたりして。

今年はたまたまいくつか古い映画を見る機会があったのですが、
自分が生まれるよりも昔に、こんなに深い映画があったなんて。
ほんとに面白いから、もし機会があったら見てみてください。

◼️DVD《血を吸うカメラ》

邦題があまりにB級(言っちゃった)なので、なかなか第一印象では見ようとは思わない映画なのですが、すごく良いです。邦題、なんとかなりませんかねえ。名作なのに。

#2017年一番良かった《映画・ドラマ・アニメ》

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