コミュ障ハリネズミの変かわいい妄想劇場『ハリネズミの願い』読書メモ

ハリネズミの願い 親愛なるどうぶつたちへ。きみたちみんなをぼくの家に招待します。……でも、誰も来なくてもだいじょうぶです。ある日、自分のハリが大嫌いで、つきあいの苦手なハリネズミが、誰かを招待しようと思いたつ。さっそく招待状を書き始めるが…。(内容紹介より)

去年の本屋大賞の翻訳部門1位とのこと。こういう本がベストセラーっていうのが面白いなと思って手に取った。

わたしは、寂しがりやさんたちを尊敬しているところがある。自分は、ひとり遊びが大好きでひとりで満足してしまうので、なにかと人を誘い出したり、人に関心をもったり、気を使ったり、愛情をかける寂しがりやさんたちがいなければ、あっという間に、幸せな引きこもりになってしまう。むしろずっと人といると、早く家に帰ってひとりになりたいなあ、と思ってしまう。

でも、ずっとひとりぼっちが良いと思っているわけじゃない。そこは自分でも複雑だ。他人に対してなにかを求めるのは、ずっと昔にやめてしまった。だから、今となってはそもそも誰になにを求めていいのか、よくわからない。自分のことは自分でしなさい、と言われ続けたせいだろうか。もし家族がいなくなって、ほんとうにひとりになったら、わたしは寂しいだろうか?と考えたら、やはり寂しいんだろうとおもう。

だから、人が好きで人に好かれたくて、一生懸命に努力できる寂しがりやさんたちを、すごいなあと、つい尊敬してしまうのだ。

自意識過剰でコミュ障のハリネズミが誰かを招待しようと考えるのは、自分の殻から一歩出ようとすることだ。または、文字通り自分のドアを誰かに開けはなとうとすること。でもそれは簡単なことじゃない。慣れ親しんだやり方とは違うから。ハリネズミは今まで針を立てて自分を守りながら、ずっと一人でやってきたのだ。今更新しい生き方を選ぶことは、怖いのだ。

妄想の中で、延々と森の動物たちに酷い目に合っては、それでも誰かを招待したいと葛藤し続けるハリネズミは、実際にはほぼ引きこもりなのだけれど、それでも新しい人生を求めて、安全圏から出ようと戦っているのだ。

谷川俊太郎さんも絶賛したという本書の、意外なような意外でないような結末は読んでのお楽しみに。この本を好きになるかどうかは、針だらけなのに、内面は誰よりも柔らかく繊細なハリネズミの、延々と続く変かわいい妄想を楽しめるかどうかかでしょうか。

◼️ハリネズミの願い

故・トーン・テレヘンは、オランダでとても愛されている作家。あとがきによれば、娘さんのために物語を作り始めたとのこと。家庭医として働きつつ、作品を書き続けたそうだ。

◼️おじいさんに聞いた話 (新潮クレスト・ブックス)

世界中から上質な文学を紹介してくれる新潮クレストシリーズのファンです。新潮文庫の糸じおりとともに、新潮社の良心だと思う。クレストから出たというだけで、条件反射で読みたくなるってすごいですよね。