日本の新進作家vol.14 無垢と経験の写真 展 2 ー 透明な視線

ピンホールの穴から見えた記憶


鈴木のぞみさんは、鍵穴など生活空間の「穴」をピンホールカメラにして、窓枠や鏡などにで直接風景を焼き付けるアーティスト。そういえば、子供の頃、穴があるとついつい覗きこんだっけ。昔の家にはあちこちに穴があったのです。障子や襖の穴に、玄関ドアの覗き穴。穴があると覗く、というのは人類の本能かもしれません。

鏡も窓枠も、新品では見られない古いもので、長く使われていたことがわかる佇まいをしている。鏡の作品には、その鏡を使っていた人の肖像がまるで記憶のように写り、窓の作品には、たぶんそこから見える、どこにでもありそうな、なんでもないモノクロの風景が写し出されている。

でも、ノスタルジックなピンホールカメラが生み出す、静かで穏やかななんでもない風景や肖像は、懐かしく美しい。もしかしたら、鏡や窓は、見続けたものを記憶しているのかもしれない、と思わせるような。そういえば、亡き人の遺品を手に、その品を愛用した人を偲ぶとき、脳裏にはその人の記憶が映し出される。写真や映画のように。

写真は、光を記録するだけでなく、思い出も記録するものだった。


鈴木のぞみさんの制作風景(東京都写真美術館Youtubeより)

自然がうつす美


武田慎平さんは福島生まれのアーティストだ。今回並んでいたのは、印画紙を野ざらしにして自然現象や放射線で感光させた作品。これは自然の記録そのものである。グラフに並んだ数字のようなもの、と言ってもいいような気がする

それなのに、抽象画のように見える画面は不思議な美しさを湛えている。自然に朽ちていった木の表面の、苔や胞子などの生命に溢れるパターン、または錆びてしまった金属の表面の複雑でカラフルな表情にも似ている。自然そのものの美といって良いのかもしれない。

なぜ私たち人間は自然のものを美しいと思うのだろう。毒を苦いと感じ、栄養のあるものを美味しいと感じるのと同じことなのだろうか?いや、違う。人を殺す恐ろしい放射能も、また美しいのだ。

紀元前のギリシアで、この世の美は、理想のイデア界の美の模倣だと考えられていたということを思い出した。ミーメーシスだ。

自然の作り出す美は、人間が作り出した美を軽々と超えてしまうと思うときがある。その自然を創り出した不思議な力を感じるからなのかもしれない。

まとめじゃなくて感じたこと

先日「世界一美味しい」という売り文句のレストランが潰れた、らしい。世界一美味しくなかったから、みんながっかりしたのかもしれない。

なんというか、meismの時代だと思うのだ。あまりにも情報がたくさんあって、自分を見てもらうためには、自分の話しを聞いてもらうためには、大声で力のかぎり自分のことを大げさに言い立てなければいけないみたい。

潰れてしまったレストランの主人も、本気で世界一美味しいなどと信じていたわけじゃないだろうけれど、とにかく主張しなければ誰も来てくれないと思ったのかもしれない。今となっては、「世界一美味しいなんて、大きく出過ぎちゃったな」とか後悔しているのかもしれない。

人目をひかなければ無視されてしまうかもしれない、という不安はわからないでもない。でも、普通にできないのかなと思う時がある。自分も、自分の普通、自分の自然でいたい。

私って素敵でしょう?綺麗でしょう?面白いでしょう?すごいでしょう?センスがいいでしょう?と、問いかけてくるようなカメラのファインダーを覗く素敵でセンスの良い視点に目を見張りながら、ときたま疲れる時がある。俺の視点、わたしの視点が、めいっぱい主張してくる。人のことは大して言えないけれど。

静かな無名の人々がいいなと思うことと、なんでもない普段の風景に惹かれること、自然に醸成されたイメージに魅力を感じることはつながっているのかもしれないと思った。

旅先で、カメラをお腹のあたりに抱えて、パシパシとでたらめにシャッターをきりながら歩く時があります。なにも撮れていない時もあるけど、案外おもしろい写真が撮れている時もある。

これは一体なんだろう?と、自分がシャッターを切ったはずなのに、謎解きのように見るのが楽しい。

それにしても、写真を撮りすぎている。ちょっとイメージに疲れている。それで最近何か自然なものがいいなと思うのかもしれない。フィルムの残り枚数を気にしながら撮った、昔の家族のポートレートみたいなもの。みんなそう感じているから、「写ルンです」が人気なのだったりして?

◼️FUJIFILM フジカラーレンズ付フィルム 写ルンです スタンダードタイプ シンプルエース 27枚撮り LF S-ACE NP FL 27SH 1

独特のノスタルジックな発色と写りが人気の写ルンです。コンビニでデータ化も簡単。普段のカメラより軽いし小さいから、昔、ちゃんとしたカメラを持っているのに、ついつい写ルンです持ち歩いていたのを思い出しました。今なら話題作りにもなりますね。