岡村桂三郎展-異境へ

会場に一歩足を踏み入れた途端、異界に迷い込んだのかと思った。低いものは子供の身長ほど、高いものは4~5mほどにもなるだろうか。重量感のある杉板に描かれたモノクロームの生き物たちで会場はすっかり混み合っている。

バーナーで焦がされ、うろこ状に削られた荒々しい絵の表面は、加えられた熱とは異なって、どこか水の底にたゆたっているような印象を受ける。

うろこの向こうから、こちらを見つめる細い目と目が合う。あちらからもこちらからも、彼らは見ている。たぶん太古の昔から、彼らはいたのだ。ずっとそこにいて、私たちを見ていたのだ。

画家の手で、太古の地層から、海のそこから呼び出されて会場にたゆたっていた存在たちに、バーナーの火は熱くありませんでしたか?と心の中でふざけて聞いてみる。

彼らは悠然と微笑む。または口の橋を1ミクロンほど歪めてにやりと笑う。または、目だけをぎろりと動かしてこちらをにらんでくる。

(私たちは地球の中心の火から生まれ、水の洗礼を受け、ずっと太古から存在してきたのだ。バーナーの火など。)

いやいや、もちろん妄想です。それにしても背中の毛がぞわぞわっと立つような、目に見えないものと出くわしてしまったような濃厚な気配に圧倒されました。どこか冷房がすごく効いてるように感じたのは、気のせい?

旅の途中に立ち寄った平塚市美術館で、会期は6/24まで。タグチコレクションの現代美術の企画展も同時開催中でした。

画像参照:2018年平塚市美術館_岡村桂三郎展会場風景 撮影/末正真礼生 平塚市美術館