【取扱注意レシピ】麹で2ヶ月熟成肉を作ってみた

ローストビーフの残りを肉汁もろともごはんに乗っけて。

私は、いろいろと考えるところもあって、ふだん肉はあまり食べない。でも夫は肉好きなので、ちょっとは悪いなあ、と思っている。それもあって、去年のクリスマスセールで、アメリカ産牛肉の塊約700gがスーパーで半額に値引きされていたのを見たとき、わたしの脳裏で「熟成肉、作ってみようか」と声がした。

ふたつの熟成肉

熟成肉はここ数年人気だけれど、レストランで食べようとするとすごく高い。それもそのはず、ドライ・エンジングされた熟成肉の廃棄率は50%とも言われているのだ。半分は捨てなければならないんじゃあ、高くても仕方がない。安い熟成肉を出しているお店もあるけど、真空パックした肉をで長期保存したウェット・エイジング肉が多いとか。こちらは廃棄がないから安いのだけれど、多少柔らかいかな?程度で、熟成肉独特の風味はしない。

この熟成肉を、家庭で作っている海外Youtuberが結構いて、一昨年からすごく気になっていた。ただ、熟成肉は、表面にカビを生やして微生物の力を借りて発酵させるもの。熟成するのはいろいろな食品が詰まっていて、いろんな菌がいそうな冷蔵庫の庫内。熟成肉専用の冷蔵庫なんて用意できないし、さらに冷蔵庫を開けたら700gの肉がぶら下がっているというのもビジュアル的に無理無理、もう絶対無理ゲー。というわけで、生肉がぶら下がっている彼らの冷蔵庫を見ながら、ないなと思って見ていた。

発酵のこと

冷蔵庫にぶら下げるのはなし。ウエットエイジングも意味ないからなし。考えていたのは麹のことである。

ここ数年発酵食品ブームに、わたしも、ちょっと遅めながら一昨年参入した。ヨーグルト、納豆、ぬか漬け、キムチ、ピクルス、ザワークラウト、自家製酵母(パン)なんかを醸しまくる毎日で、だいたい菌との付き合い方がわかってきた。といっても要するに、それほど神経質にならなくても案外大丈夫、ということです。

冷蔵庫のない時代のものなのだからまあ、当たり前とも言えるけど。食品に使われている乳酸菌や酵母、納豆菌、麹は、とても強い菌なのだ。イーストなんかもそう。強力なエリート菌たち。

わたしの大雑把な理解だけれど、生き物というのは自分が生き残るために環境に働きかける。牛乳に乳酸菌を入れると酸っぱいヨーグルトになるのは、乳酸菌が文字通り酸を出すからだが、酸性の環境では腐敗菌は繁殖しにくい。結果、乳酸菌は生きやすく、ほかの菌が繁殖しにくい環境になる。ちなみに牛乳をほっておいても酸っぱくるけれど、乳酸菌の量が少なくて腐敗菌が多いと、発酵ではなくて腐敗だ。

食品に使われているエリート菌を使って肉を発酵してみたら、腐敗を防ぎ美味しくなるんじゃないだろうか、と思ったのだ。

麹を使った理由

そのなかで麹を使ってみようと思ったのには、もちろん理由があって、塩麹を作ってみた人は知っていると思うけれど、最初とろっとするくらいの水分量にしておいても、しばらくするとカラカラに乾いてくる。麹は発酵しながら水分を吸うように見えるのだ。だから、ドライエイジングでつきものの乾燥による旨味の凝縮を、麹を使うことで真似できるのではないか、と思ったのがひとつの理由。それから、実際だれかやってないだろうかと、ググってみたら数人の米国人シェフがすでに麹発酵肉を試していて、短時間でうまくいくらしいことがわかったから、というのも大きな理由。わたしが見つけた限りでは彼らが発酵に費やしたのは長くて数週間くらいだったけれど、とにかくもプロがやっているなら頼もしい!

さっそくやってみよう

わたしが使っているのは生麹。塩麹しょうゆ麹用に取り寄せて、冷凍庫で保存している。塩分量は、塩豚を以前からよく作っていたので、塩豚と同じ肉の重量比で3%にした。だいたい見た目同量くらいの麹と合わせてすりこぎで潰してなるべく細かくした。

最初すりばちでやってみたところ、溝に麹が入り込んでやっかいだった。生麹なら硬いものでもないし、ふつうのおわんとかボウルで十分です。

これを軽く洗って水分を拭き取った肉に満遍なくまぶし…

ラップに包んでジップロックに入れ、冷蔵庫の奥で発酵、というか放置。写真はラムです。いつ食べようかな。

鍋で簡単ローストビーフの作り方

はじめての熟成肉、心配だったので時々開けて、すこしづつ端っこを焼いて試食しながら約2ヶ月弱熟成した。嫌な香りや味がしたらどうしよう、とびくびくしていたけれど、だんだん旨味と麹独特の風味が強くなってきて、大丈夫でした。成功!

いよいよ調理。肉の周りについた麹かすを洗って水分を拭き取り、新たに塩胡椒を刷り込みます。我が家のローストビーフはストウブ鍋で簡単に柔らかく作っています。

以下簡単にやり方です。
1. 強火で熱したストウブ鍋に好みのオイルを入れ、肉の塊を入れて強火にして肉の周囲に焼き色をつけます。熟成肉の香りをいかすために今回はバターを使用。
2. すべての面にしっかりと焼き色がついたら蓋を閉じて火を止め、保温材やボロ布などに包んで数時間放置。ストウブ以外の鍋でやるならば、やったことはないけれど土鍋など熱が下がりにくい鍋がいいと思います。
3. お肉が十分冷めたら薄く切って盛りつけます。熱いうちに切ってしまうと肉汁がぜんぶ出てしまうので必ず冷めるまで待つこと。鍋に残った肉汁は煮詰めて、バターやワイン、バルサミコ酢などを加えてソースに。

火を止めた時に、スティック温度計で中の温度を測っています。60度が理想温度。ミディアムでちょうど良いところなのだけれど、今回は、食べる前に突如びびって(笑)、アルミフォイルに包んでオーブンでさらに中までしっかり火を通してしまったので、ウェルダン。

また、ある程度大きな肉でないとぱさぱさになるので注意が必要です。小さな肉の時は焼き色のつき具合や、放置時間を工夫する必要があります。逆に大きな肉は、ちゃんと火が通るようにしっかり焼き色をつけてください。

味は?

しっかり火が通っているので、硬いかなと思ったけれどわりと柔らかい。さすが麹の力。乳酸菌発酵もしていたらしく軽い酸味もあり、チーズっぽいとも言える。ドライエイジングビーフとも違うまろやかな複雑味です。一番面白かったのが、肉汁にバターと赤ワイン、バルサミコ酢を加えて作ったソースになぜか濃い醤油のような旨味というか風味があったこと。とにかくそのままの肉とはぜんぜん違う。複雑だけど、むしろ軽い。

がっつり重く血が滴る肉肉しい感じが好きな方には物足りないかもしれませんが、夫婦ふたりで、赤ワインとともにぺろりと一食でほぼ食べ切ってしまいました。翌日残った数切れをごはんに乗っけてまたぺろり。完食。赤ワインにも日本酒にも合いそうなローストビーフでした。(東洋美人などの、コクと酸味もある吟醸酒が合いそう)

試される場合は、衛生的に作って自己責任で!とはいえ、お味噌なんて大豆に麹と塩をまぜて数ヶ月室温で発酵させるのですよ。ふつうに煮大豆を室温に置いておいたら、あっという間に腐るのに。そういえば良いお味噌は軽く酸味を感じることがありますね。実は今年の初めにお味噌もはじめて作ったので、それも楽しみ。出来上がったら報告するつもりです。

◼️やさかの有機乾燥米こうじ(500g)

甘酒や塩麹ブームでいろんな麹が出ていますが、うちはこれが気に入って使っています。冷凍してちょっとづつ使っていますが、半年くらい冷凍しても元気いっぱい。

◼️タニタ スティック温度計 グリーン TT-533-GR

肉に突き刺して使ったり、パンの発酵の温度を確かめることができるスティック温度計。最近は電子式で安いものがたくさん出ているので、一本あると重宝します。

◼️staub ココット ラウンド 20cm ブラック 40509-487(1102025)

ストウブ鍋。ほぼ毎日ヘビロテです。洋風料理だけでなく、煮物もふっくら、ほっこり、しみしみで、とても美味しくなります。

肉食というか、食に関してわたしが考えるところについてはこちらで書いています。また、畜肉に関しては、殺して食べるためだけにほかの動物を閉じ込め、産ませ育てるということに、人間の傲慢さみたいなものをどうしても感じてしまう。外食の際は、なるべく、天然物の魚介類や鹿肉などジビエを食べます。とはいえ生き物が生き物を食べて生きていくということは、もうどうしようもないことでもあることは十分承知しているのですが。