「ウィスキーとふたりの花嫁」:スコッチ好きにおススメ?ユーモアたっぷりの映画

映画「ウィスキーとふたりの花嫁」を見て来た。原題は"Whisky Galore"。galoreは信じられないほど大量にあることを示す形容詞だ。

舞台は第二次世界大戦の頃、スコットランドのある小さな島でウィスキーがなくなってしまった。そこに大量のウイスキーを積んだ貨物船が座礁して、島民たちは大喜び。座礁した船から高級ウィスキーをこっそり盗んで…。スコットランドのエリスケイ島沖でSSポリティシャン号が座礁した事件の実話を基に描いた物語で、1949年に一度映画化されたもののリメイクだ。監督は当時の事件を知る人々に、かなり丁寧な取材を重ね、10年かけてこの映画を作ったという。

数年前にスコットランドアイラ島で蒸溜所めぐりをしたので、「いったいどこの島だろう」と興味しんしんで見たけれど、映画の中では、島もウィスキーもすべて架空の名前だったようだ。実際撮影が行われたのも、島ではなくて、スコットランド北部のポートソイという海辺の村で撮影されたそう。

話は郵便局兼電話交換所を営む父親と2人の娘たちを中心にすすんでいく。彼女たちはそれぞれ恋人がいて、結婚を望んでいる。娘の幸せを思いながら、娘ふたりをいっぺんに失ってしまう父親の気持ち、一方で息子の結婚を許したくない恋人の母親の寂しさ。ウィスキーを大量に乗せた船の座礁事件とそれにまつわるドタバタ劇が、彼らの人間模様とたくみに絡まって飽きさせない。

父親役のグレゴール・フィッシャーも味があって良かったけれど、私は、コメディアンのエディ・イザードが演じる、クソ真面目で権威主義的、一所懸命なんだけど、いまいち抜けているまぬけなワゲット大尉がすっかり気に入ってしまった。いや、そばにいてほしくはないんだけど。

彼はイギリス人のスタンドアップコメディアンなのだけれど、トランスジェンダーレズビアンでもあって、時折女装して出てくる。特に女っぽく振る舞うわけではなくて、ただ化粧して女性っぽい服を着ているだけの女性装だ。4ヶ国語が話せるという。すごい。小さい頃に母を亡くして、すべてのことは亡くなった母を取り戻したくてやっているんだ、となにかのインタビューで言っていたのが印象的だった。

少々呆れつつも、夫のワゲット大尉を優しく支える妻役のジェンマ・ウィーランもおちゃめでよかった。こういうキャラじゃないとこの人の奥さんはとても続かないよね、というのがすごくリアルなのだ。でもちゃんと夫を愛しているのがじんわりと伝わってくる。

結婚する年の息子を、部屋に閉じ込めてしまう謹厳すぎる母親(アニー・ルイーズ・ロス)も、最後の結婚式の宴に、とうとうひとりぼっちの家から出て、ウィスキーを飲み干してぎこちなく微笑む。

ウィスキーさえ飲んで踊れば、みんな許されて、みんな幸せ、みんな良い人。みたいな単純な結末といえばそのとおりなんだけど、スコットランドの小さな村の美しい情景や透き通った海、音楽、魅了的な俳優たちとユーモアで、ずっとくすくす笑いつつ、なんだか幸せな気持ちにさせてもらった。

そういえば、40カ国以上の国で四言語を操りステージをこなすエディ・イザードは、「ユーモア(humor) はヒューマンだ。」と良く言っていたっけ。よく英国ジョークというけれど、笑いは国と関係ないというのが彼の主張なのだ。

なかなか良い映画でした。

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では、今日もユーモアたっぷりの1日に!

*画像参照:IMDBより。このバージョンだと、なぜかワゲット大尉が真ん中!